大事なラブレター〜トマパイ散開一周年に〜

一年前、出さなかった手紙

今、この手紙を書いているのは2012年12月30日、皆さんが「散開」した翌日になります。
本当は昨日、書こうと思っていた、この手紙ですが、何から書き始めたら良いか判らず今日になってしまいました。

そう、皆さんに出会った日のことから書き始めれば良いのでしょうね。iTunesの「キャプテンは君だ」の登録日を確認すれば、それが2010年10月5日だったことが判ります。それよりも前、7月ごろに「Tomato n' Pine」というグループ名はTBSラジオ「タマフル」で、「申し訳ないとフロム赤坂フェス」に早朝アイドルとしての出演が決まった時に知っていたのですが、その時の情報では「変わった名前だな」と思っただけでした。

その後、多分、まずは楽曲の評判からと、ももクロと一緒に「アイドルちん」に出演することが決まったことを知ってからだったと思うのですが、YOUTUBEで探して動画をチェックした時の興奮は久しぶりに味わったものでした。おそらくPerfume以来と言って良いでしょう。
既にシーズン2が開始されていたところで、シーズン1の動画も一緒に観たのですが、こちらはもう、何と言うか「存在が信じられない」ようなものでした。そう、多分、「存在してはいけなかった」もの、「奇跡」だったんだと思います。
YUIさんが、まだ小池唯名義のままで「奏木純」さんと一緒に活動したシーズン1は209年4月4日にインディーズで発売された素晴らしいデビューEP「Life is Beautiful」と、そのプロモーションのみで、奏木さんが脱退してしまい、あっけない終わりを迎えていました。
それだけでも、間違いなく「Tomato n' Pine」という名前は音楽史ガールポップの項目に「隠れた名盤」を残したグループとして刻まれたと思いますが、それだけでは終らなかったからこそ、今、これを書いていられるわけです。
でも翌年8月25日にリリースされた「キャプテンは君だ」はシーズン1の終わり=別れを織り込んだタイトル曲によって始まっていました。
思えば、翌年3月9日のメジャー第一弾「旅立ちトランスファー」も出発の陰に別れを含んだ歌詞世界でした。
そのため、多分、僕も、そして少なからず他のファンの人たちの多くも、いつか来る別れを感じながら、活動を見守っていたように、今からすると思うのです。でも、そのことが、ほとんどアイドル的なキャッチーさではなく、楽曲を中心とするグループの作品としてのクオリティ向上を第一にした「在りがたい」方向性を、現実として受け入れるためには必要だったのかもしれません。
シーズン2は、シーズン1のように「奇跡」でも「存在してはいけないもの」でもなかったけれど、「在りがたい」、「魔法がかかった」2年半でした。
思えばデビュー曲は震災の影響でプロモーションが出来ず、また3枚目にして最後のシングルになった「ジングルガール上位時代」でもWADAさんの病気で握手会のみ開催と不運が重なったデビュー年も、何か見えない力が、その魔法を消そうとしていたと妄想させるようなものでした。

それでも皆さんは今年の2月から西麻布elevenでの定期イベント「POP SONG 2 U」を始めることで、今度はライブを中心として魔法のかかったようなパーティを実現してくれたのです。クラブは正直苦手で2.5DによるUST中継で満足していた私も、とうとう後半は全部、通うことなりました。
2010年10月の新宿ロフトでのタワレコ主催のイベントなど素晴らしいパフォーマンスはあったものの基本的にライブは苦手としていた皆さんが、ようやくホームを作ったイベントでした。でも集客には苦労していたようで、十分に参加できなかったことを今になって悔やんでいます。

正直のところ、歌唱はリップシンクに近い「かぶせ」になっていましたが、「PS2U」での音響とMIXは本当に最高の技術に支えられていました。ある意味では、ほとんど「地下」アイドルのイベントとフォーマットは変わりないものなのに、箱の環境が違うと、ここまで違うのか。もちろん見えすぎないステージの低さも魔法の条件ではあったと思います。

そう、何よりも、とにかく、あの一番、「駄目だった」と言っていいステージングだった去年12月の新宿BLAZEのイベントでも完全に開眼していたWADAさんのライブを引っ張っていく力が十二分に覚醒したステージを繰り広げていたことを記録しておきたいのです。特に「ワナダンス!」は完全に「ワダダンス!」とも言えるパフォーマンスでした。というか、あの満員の箱の状況ではWADAさんの姿を追うので精一杯で、ステージ全体を見渡すことは無理でした。

そう僕はWADAさん、いや和田えりかさんが大好きでした。アラフォーにもなる男が恥ずかしげも無く書いてしまいますが、思わず2枚目のシングル「なないろ☆ナミダ」でのイベントでは、ほどんど握手会には参加しない私なのに2回も握ってしまいました。逆にその事で、もっと深入りすることが怖くなって、遠くから見守ることが多くなってしまった、と言えば言い訳になるでしょう。そして、最初から、いつかは終わる魔法の時間であることを感じていたと言うことも…。

でも散開が決まって最後になった「PS2U」を、ほとんどステージが視界に入らない状況で観ながら、終わることが判りながら、それを意識しないことで魔法が成立していたことが判ってしまったのです。
最初で最後のワンマンライブ「POP SONG 4EVER」でも、明らかに解散ライブでありながら、直情的な湿っぽい雰囲気を削ぎ落とすようなステージが、魔法を何とか消さずにいたように思うのです。唯一にして傑作アルバム『PS4U』でも青春の終わりを歌う「夢のカケラ…」の後の、構成的には殆ど蛇足に近いリミックスヴァージョンの「ワナダンス」が奇跡を起こそうする魔法の呪文のようです。

トマパイの御三方、そしてジェーン・スーさんを始めとするスタッフの皆さん、本当に魔法にかかった音楽の時間をありがとうございました。
そして、今は魔法が解けて、普通の女性に戻った和田さんが、また僕らの前に姿を現すことがあるのか、それは期待せずに待つことにします。
それまでは、バイバイ。

一年前、書かなかった追伸
ぶっちゃっけ、シーズン2について思ってたことは、まだありました。
何よりYUIさんを目立たせるためのヴィジュアルデザインが目立ったように感じます。痩せぎすのHINAさんと当初は結構、ぽっちゃりしてたWADAさんの間で、ちょうど良く見えるYUIさん、みたいな。だって、WADAさん明らかに、太って見えるジェケ写が多い。「キャプテンは君だ」が特にですが、アルバムもそう。シーズン1はYUIさんが丸顔担当だったのに!
このあたりジェーン・スーさんのヴィジュアルコンセプトを含めたプロデュースは「的確だった」のだけどWADAファンにとっては甚だ不本意なものでした。
最近、久々にトマパイをまとめて聴いて、やっぱ凄いな、と思った。最近は「これはトマパイぐらい良く出来てるかも」と思うようなアイドル楽曲もあるんだけど、やっぱりこのレベル近づくのは難しいです。
まずマスタリング音質がとっても良くて、なかなか他で同じぐらいのクオリティを出せてるところが無いという越えられない壁があるわけで。
ただ、トマパイは楽曲はトップレベルだったんだけど、正直、アイドルとしては一部から色々と過大評価されていたところがある。
手紙でも書いてますが、「PS2U」というクラブイベントは、はっきり書けば、ほとんど口パクのステージ(ちなみに初期はシーン2でも、もっと生歌の要素が強かった)。
踊りも練習は頑張っていたとは思うけど…あの照明が暗めでギッシリ客が入って見えにくい環境だったから駄目なところが目立たなかったという、まあ「魔法」があったことは客観的に書き残しておかないといけないと思います。
また実際CDのヴォーカルに関しても色々と「魔法」がかかってたと思うんです。
きっちりCDのクレジットでは"Additional Vocals"というかたちでコーラスだけじゃなくて他の女性が一緒に歌ってるのが明示されてます。
トマパイ楽曲のヴォーカル部分というのはオートチューン臭さがない音像なんだけど、このあたりに「秘密」があったんじゃないかな、と推測されたりします。

最後にトマパイメンバーのその後をまとめておきましょう。WADAこと和田えりかさんは直後に事務所を移籍して現在は風間亜紀さんと言う芸名でタレント、モデル、女優として活躍中。YUIさんこと小池唯さんも同じく事務所を退所。退所前に撮影していた映画のプロモーション活動を秋にしていたようですが、まだ今後の活動は不明。
HINAさんこと草野日菜子さんは昨日、トマパイと同じアゲハスプリングスが楽曲プロデュースするユニット「fait★star」をYURIAさんという方と結成したことが発表されました。ほぼトマパイの後継ユニットと言っても良いような感じなので、楽しみなところです。