オリコンチャートを殺したのはだあれ?

本当はTechCrunch風に「オリコンは死んだ」にしようかと思っていたんだけど、本家も光学ディスクについては「さよう、Appleは今日CDを殺した」と言っていますので「殺し」で行きましょう。

他のTechCrunchの記事で指摘されていたことですがiTunesの新デザインのアイコンからも光学ディスクは消えてしまっています。でもオリコンチャートを殺したのはアップルじゃありません。

昨年のオリコン年間シングルCDランキングが既に発表されていて、10位までがすべてAKB48とARASHIのみで独占されてしまった結果に触れているメディアは多いのですが、事態の本質に触れてくれているものはないように思います。


かつてオリコンチャートは、ラジオ局やTV局によるチャート(例えばTBSテレビの「ザ・ベストテン」)よりも「透明性が高く」、「客観的」であるという理由で80年代後半から、一般に有名になりました。現在の一般メディアでは、このオリコンチャートが楽曲の人気を計るための基準になってしまっています。
しかし週間のシングルチャートは1週のみのデータですから、例えば発売週に5万枚売って一位になっても最終的な売り上げは10万だったCDよりも、年間で少しずつ売って11万枚になったシングル(演歌で良くあるパターンです)の方が多くの人に届いているわけです。
なのにメディアは初登場一位になった曲の方を大きく取り上げしまうということがあります。


こういう事態は、実はオリコンが有名になった80年代後半から既にあったことです。
その頃は、おニャン子クラブが一世を風靡して、関連のシングルが毎週のように「初登場1位」を獲得しては、ほとんどが次週には急降下していた時代です。
そしてオリコンの社長自身が登場して、それを発表していたのはおニャン子を生み出した「夕やけニャンニャン」というTV番組でした。


さて、その「夕ニャン」の企画にかつて大きく関わった秋元康がプロデュースするAKB48が、時代は巡って現在のオリコンのチャートを席巻しています。
これについては「あれはCDについてくる握手券を入手するために複数買いをしているためで実質的な人気ではない」と指摘する意見があります。
しかし、これは一面の事実を伝えていますが、事実全体については語っていません。
実際のところ、昨年のAKB48の人気は一般層にも広がった実質的なもので、とりあえずは「社会現象」と言っても良い規模のものではあります。
それことは配信系の年間チャート(レコチョクやiTSのもの)を参照すれば、わかります。
しかしながら、シングルチャートを席巻するような規模の実質があるのかと言えば、これもNOです。
どの程度のものだったかということは後にして、一方、男性アイドルの雄、ARASHIの人気について考えて見ましょう。


ARASHIを含むジャニーズ事務所所属のグループの楽曲はWEB配信されていない、ということが一つのポイントです。
その分、レンタルも含むCDで入手しなければらないので、他の配信されている楽曲とは違いCDの売上のみが楽曲の売上です。
ただ、更に指摘しておかなければならないのは昨年からのジャニーズ関連シングルはカップリングの収録曲違いの複数ヴァージョンが登場していることです。
このような手法はAKB他の女性アイドルにおいても行われています。


これをやったのは、私が記憶している限りではジャニーズが1985年の少年隊デビューの際、「仮面舞踏会」のシングルでB面収録曲違いを3種類発売したのが最初でした。


昨年のジャニーズ系の楽曲は大体、2パターンのヴァージョンが発売されていますので、コアなファン層は当然2枚買いすることになります。
良く考えてみれば、AKBは配信で買えますから、CDに拘らない一般リスナーは全曲チェックしようと思ってもタイトル曲を複数買いしなくても済みますが、ジャニーズの曲を聴いてみようというリスナーは、まずCDを買わなければならず、また全曲チェックしようとすると2枚買わなければならないという、敷居の高い発売形態になっているわけです。


このような商法でARASHI以外もジャニーズ系のグループはシングルチャート11位以下で多くランクインしています。
さて、それではARASHIは上げ底の人気なのかと言えば、これもNOです。
AKBと一緒に、人気の実質を考えてみましょう。


それにはオリコンのアルバム年間チャートが参考になります。アルバムの場合は初回盤にボーナス曲がつく場合は多いですが、複数買いする必要が生じる曲目違いというのはありませんので。

実際のところARASHIはトップの人気です。そしてAKBは12位となります。
ただしAKBは劇場盤にサイン会参加券が付く商法でしたので、「ドーピング」を含んでいますが、ある程度参考になるでしょう。
(この点で完全に透明、客観的ではないので、オリコンはアルバムチャートも生き残っているかというと微妙です)。


これを見ると「配信だけで売れている」というイメージを持つ人も多いかもしれない西野カナも、本当に人気があるのがわかります。
(個人的に「怖い」のは遊助SMAPより人気があることだったりしますが…)。


オリコンは構造的には80年代から既に問題を抱えていました。そして、アイドル系レコード(CD)の商法によって、その問題が完全に露呈したと言えます。
これまで見てきたいように結局は複数のチャートを参照しないと実質は見えてきません。そして最終的に、完全な客観的データというのは、得るの難しいのです。
おそらく配信中心のチャートになり、更にクラウドソーシャルネットワーク系の技術で、実際にリスナーが聴いたデータが集計できれば、客観というのも理論的にはありえるのかもしれませんが、それを私が望むかと言えば…まあ個人的にはNOですね。