Hello! Goodbye Part.1

 ハロプロではなくHello! Projectについて考えてみたい。
リストラではなくRestructuringについて、考えるように。思えば、Hello! Projectという事業体は頻繁にRestructuringを繰り返す特異な女性ダンスボーカルグループである「モーニング娘。」を母体として出発したものでした。


 彼女たちの遍歴は加入と脱退の繰り返しによるメンバー増減の歴史であり、この過剰な流動性は、彼女たちが登場した90年代後半以降の日本社会の縮図になっているとも言えます。
 このようなグループは現在では珍しいものではなくなり、近年の一番の成功例ではAKB48があります。しかしながらHello! Projectが特にグループ・リーダーの人事などの組織作りにおいて、日本的な年功序列を維持しているのに対して、AKB48はよりフラットな組織になっていると考えるのが正答でしょう。またメンバーの増減はグループ内のチームでは16人程度に抑えられていますし、全体でも48人を大幅は越えないよう抑えられています。
それはあたかも学校の仲間(スクール・メイツ!)のような関係性によって組織を構成しているように思えます。裏面を見れば、そこにはモラトリアム的かつTeenage Idolとしての年齢制限があり、一方のモーニング娘。の方が初代メンバーの中澤裕子が既にOL経験のある社会人であったように、年齢における差別が少ないとも言えるところです。
更にHello! Projectは2002年、ティーン未満の小学生を対象とするオーディションによって「ハロー!プロジェクト・キッズ」を選出し、そこからBerryz工房℃-uteをグループ編成して、デビューさせています。
 このようにHello! Projectは伝統的な「ティーンエイジャーのアイドル」の枠を大きく超えた組織であると言えるのです。


 このキッズ部門の新設を機に運営者側は、それ以前からのHello! Project所属グループ、シンガーの増員により大規模化していた事業組織全体の大幅なRestructuringを行いました。コアなファンたちからは「ハロマゲドン」と通称され、彼らに大きな衝撃を与えた、この大再編については、最近、出版された『グループアイドル進化論』(マイコミ新書)でもHello! Projectが「ファンのニーズを読み違えて」、人気の低迷につながった大きな原因であるかのように語られていますが、この評価は一面的過ぎると思います。
実際のところブーム収束は2001年の後半には起こっており、モーニング娘。のシングルでは「ザ☆ピ〜ス!」が68万であったのに対して、新メンバー加入を経た、続く「Mr.Moonlight 〜愛のビッグバンド〜」では51万、更に「そうだ!We're ALIVE」(44万)までにまで下降しているのです(出展資料)。
もちろんこれはCD全体の売上の下降傾向と不可分ではありませんが、とりたてて再編の影響が大きかったとは言えないということが判ると思います。単純に大再編はこの流れを止められなかったと言えるだけです。


 この再編の目的は第一に後藤真希の卒業とソロ専念にあったのは間違いありません。二番目に、売上の維持と増加に繋がらなかった新メンバー(5期目)および他ユニットのアピール度アップ。そして最後にキッズ部門の育成と矢口真里をそのリーダーに置くことがあります。
内容が複雑なので再編の全貌は興味のある方はWikipediaの記事を参照していただきたいのですが、後藤のソロ専念は、その後の成否は度外視して、ある程度、合理的でしたし、キッズ世代の育成は一定の結果を出しています。
こうして分析すれば、一番の問題点が明らかになるでしょう。それは5期メンバーオーディションにおける選出と育成の「失敗」です。モーニング娘。は新メンバーの加入によって新たなファン層を獲得、あるいはファン離れを抑制防止することによって存続してきましたが、その戦略が5期において成功しませんでした。
ここでは失敗の原因については詳しく分析せず、事実を明らかにするのみにとどめます。
当然ではありますが、Restructuringは万能ではなく、的確に人材を選出し、育成、配置することでしか成果は得られません。


 さて、ここまではメンバー編成を中心に話を進めてきましたが、もちろんこれだけが重要なのはありません。当然、自作自演グループではないのですから、楽曲製作の体制も大きな比重を持っています。Part.2では、こちらを検討しましょう。