勇気ある選曲

 お決まりの見舞いの言葉は止めておこう。他の言葉を費やすために。


 先週も何とか更新しようと思ったのですが、あまりにも多い震災に関する情報の前でやはり言葉を失っていました。東京に住み、被害がなかった私でも計画停電交通機関の状況に関して確かな情報をつかまなければ安心して生活が営めない状態が続いています。

 そんな中でも情報の洪水に流されずに冷静さを保つ拠り所になっているのは音楽であり映画であり、人間としての文化的な営みです。

 おそらく私は3月12日の「TBS RADIO ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」で流れたTomato n' Pine「キャプテンは君だ!」を一生忘れないでしょう。
 以前から心動かされる曲ではあったのですが…。


天気予報 絶対じゃない 誰も悪くない

 こちらもTBS RADIOですが「小島慶子 キラキラ」に先週金曜日、出演した町山智浩氏によるRC サクセション「サマータイムブルース」の選曲(それからオーケーを出したTBS RADIOの判断)も勇気あるものだとは思いますが、不謹慎とか不適切というのとは別の意味で、今の状況に合わないところがあるように感じました。
 今、聴くべきは「電力は余ってる」とコーラスするRCでも、「原発事故現場には行きたくない」と叫ぶブルーハーツの「チェルノブイリ」でもなく、この曲だと思います。

 1988年、RCの前述の曲も収録された『COVERS』の発売を東芝EMIが中止した時、FM東京の自身のレギュラー番組で「遺憾の意」を表明した佐野元春のことを今でも私は記憶してます。

 同年、発表された「警告どおり 計画どおり」のシングル盤のジャケット裏およびピクチャーレコードB面に記された"IMAGINE OF / THREE MILES Is. U.S.A. / CHERNOBYL U.S.S.R. / WINDSCALE U.K. / AND NEXT?"のNEXTがどこであったか。
"FUKUSHIMA JAPAN"であることは世界中の人々が今、知るところです。

 発表当時はRCやブルハに比べて「微温的だな」というのが正直な印象でしたが、今聴くと簡潔で、鋭く、重い言葉に満ちた曲です。

終わりは来ないと
つぶやきながら
眉をひそめてる君
クレイジーに傷ついて
どこにも帰れない
やがて滅びるまで何もせず
ただおとなしく見つめてるだけさ

 確かに今回の事故はチェルノブイリ級には決してならないでしょう。休止中の火力発電所を稼動させるまでは、電力不足は続き、各所の原発を今、ストップすることは、被災地を支援するために必要な非被災地の力を低下させてしまうのも明らかです。
 でも、このままの電力政策で、未だに「終わり」=最悪の結果ないと、楽観的に想定している人たちに大きな疑問をつきつけずにはいられません。私も含めた、これまでの傍観者的な姿勢が今、住民と現場作業をしている人たちを危険に晒しているのです。


 でも、ゲスト・ギタリストいまみちともたかバービーボーイズ)による非常に立体感のある素晴らしいアルペジオのフレーズに感動する余裕も忘れずに。