代替をダイガエと読むのが嫌い

 将来、期待したいのは「ダイタイ」エネルギーだし、ホメオパシーなどは眉につばをつけなきゃいけないのが「ダイタイ」医療。
 重箱読みだって言うのもありますけど、「代替え」と送り仮名をするのもイヤですな。「代える」し「替わる」で両方とも同じ意味を重ねてるんだから、読みも両方同じ漢読みじゃないと。政権交代でも政権交替でも、とりあえず意味は同じ。
 まあ英語で言うと「オルタナティブ」ってことなんですけど、このオルタナティブというのが、意味として普及してないために、未だに日本では「サブカルチャー」なんて言うものに、大きな意味が与えられてしまっているんじゃないかと思ったりするわけです。サブカルとか略したり。中森明夫が「サブカルチャー終戦争」というのを「SPA!」で連載してた90年代前半なんですけど、その頃、既に英米ではサッチャーレーガン新自由主義からブレア政権とクリントン政権への政権交代を背景に、産業化したロックに代わるオルタナティブなシーンがカレッジ・ラジオなどを基盤として勃興していたりしていたわけですが、日本では自民党から短期間、細川連立政権への交代があっただけでしたし、音楽も渋谷系として消費された感もある新しいロックがJ−POPなんていうものに押し流されてしまうという、お寒い状態。

 そんな中で、サブカルチャーカウンターカルチャーにつながる"subversive"(破壊的)という意味よりも、日本ではメインカルチャーとの差異化としての「サブ」の意味に、どうしても偏りがちだったのではないかと感じざるを得ません。「どうせ俺らはサブだから(でもメインとは違って…)」というようなアイロニーを含んだものとして。
 その後、「10年遅れの新自由主義と呼ばれた小泉政権後」、ようやく政治的には民主党への政権交代が起こっても、またまた官僚主導に引き戻されそうなところ。


 そんな今、オルタナティブを標榜するBiSというアイドルグループがいる。
 "Brand-new idol Society"の略称とのことですが同名のアルバムでCDデビュー。「新生アイドル研究会」というキャッチフレーズで勢力的に活動しています。
 元々ソロとして活動していた女性シンガー、プー・ルイが「私、本当はアイドル・グループがやりたかったんです」とスタッフに打ち明けたところから始まったプロジェクトだそうですが、今時のアイドルグループらしくオーディション過程からWEBサイトototoyリアルタイムドキュメントしつつ結成。 
 YouTubeはもちろんUSTREAMも最大限活用しながらコア層にアピールしながらファンを拡大中なのは宗像明将氏の現場レポートに詳しい。
 そんなライブ映像から1曲。

 個人的な感想を言うとCDデビュー前にototoyから最初に無料配信された「太陽のじゅもん」が一番、衝撃でした。何を間違ったのかCDの音質を超える24bit/44.8KHzの高音質wavファイルだったのです。これはototoyがHQDとして宣伝しているもので最近の世代のiPod nano / touch、iPhone等のプレイヤーでサポートされている規格です。

 ダウンロードのページにはそのことが特記されていませんでしたし、無料配信第二弾は普通のwavファイルだったので、ほとんど「事故」のようなかたちで配信されてしまったんじゃないかと思われます。
 「太陽のじゅもん」は曲調もホーンのフレーズが印象的なR&Bテイストのミディアムナンバーに現代アイドル的なオートチューン加工ヴォーカルが乗ると言う素晴らしいもので、アルバムにも収録されていますが、HQD音源が無料配信のみのプレミアになってしまったのは少々、残念なところ。YouTube等にも上がってないので、アルバムの配信ページから試聴してみて下さい。
 有料配信もHQDはありませんがwavも購入可能で、ここまでやっているアイドルグループはなかなかいないと思います。
 では、もう1曲。無料配信第二弾でもあったオルタナティブ・ロック・サウンドの、こちらを。

 そんなわけでアルバムをototoyで購入してみました。定型として「オルタナ」のサウンドに若干、偏ってしまっているところがありますが、良い曲が揃ってますし、それ以上に自給自足アイドルを標榜して振り付けのみならず、宣伝やイベントブッキングをメンバー自身が行うDIYな活動形態等がアイドルシーンのオルタナティブとして機能しつつあるのに期待が持てるなと感じます。 


 私はサブカルを標榜する側にも期待してませんけど、「サブカル」と言って何かを攻撃するのも詰まらないなと思う今日この頃だったりします。
 最近、TBSラジオの「キラ☆キラ」でのコラムコーナーでも、とうとう「アイドル戦国時代」のプレゼンを始めた吉田豪氏による、ももいろクローバー評価におけるサブカル対プロレスというアングルも正直どうでも良いです。それよりもピエール瀧氏の「うろ覚えのコピーがオリジナルになったりする可能性がある」という意見がBiSのアイドル研究にも重なっていて非常に興味深いなと思います。さすがは長年、電気グルーヴで瀧を担当してらっしゃるだけのことはあります。


 ところでオルタナティブを代替と訳すのも、ちょっとニュアンスが弱わいと思ったりもします。本当は定番のこれで行きたいんだけど、それがないから代替品でみたいな。
 オルタナティブっていうのは、そうじゃなくて平たく言えば「これもアリ」ということだと思うんですね。更に場面によっては「今はこっちの方がアリじゃない?」、そういうのがオルタナティブってことじゃないかと。