「グループアイドルの起源」

日本近代文学の起源』のあとがきで柄谷行人が述べているのと同じようにタイトルに含まれる単語は全て「括弧」に入れられなければならない。とりわけ「起源」については。
 この短文の目的は、例えば「おニャン子クラブを創った秋元康がグループアイドルのオリジンである」とするような言説に対する批判である。
「アイドルの起源」における「すりかえ」については太田省一『アイドル進化論』における優れた分析を参照のこと。『スター誕生』のスタッフが決してアイドルを産みだそうと思っていたのではなかったのと同じように、おニャン子クラブのプロトタイプであるオールナイターズも決してグループアイドルを目指して結成された集団ではなかった。
最初にアイドルを生み出したのはファンの「視線」である。


 まず、ここでは音楽パフォーマンスが議論の中心にあることを確認しておきたい。
 女子大生集団オールナイターズというプロトタイプを引き継いで、女子高生を中心にアイドル的な集団として意図的に結成された、おニャン子クラブについて「AKB48とは違いグループよりもソロやユニットでの楽曲が中心だった」と語られることがあるが、これも転倒した議論と言うべきである。
 まず集団的パフォーマンスをする音楽芸能的必然はどこにあるのだろうか。
 二人の歌手が集えばハーモニーになり、トリオでは三和音となる。更に多くでは複雑なコーラスが可能だが、それはアイドルという未熟な演者に適したものだろうか。単なる集団による歌唱の行き着く先はAKBが「桜の栞」で企画的に行った合唱に他ならない。
 だから「おニャン子クラブ」名義での歌唱パフォーマンスにしても4人ないし5人のソロパートを持つメンバーと「その他大勢」のバックコーラスという形態だった。

 五指に余るメンバー編成で全面的にパフォーマンスするアイドルグループでの最初の成功例は光GENJIなのだが、女性アイドルのみに焦点を当ててしまっている多くのグループアイドル論(例えば『グループアイドル進化論』)は、その事実を看過してしまっている。
 彼らにおいては、ローラースケートを駆使した目まぐるしく変化するフォーメーションによる演舞が、7人という人数に対する必然性を与えるものだった(対して歌唱におけるリップシンクも導入されることになる)。


(部分的には7人でも足らずダンサーを追加)


 そして本格的な女性グループアイドルであり、劇場を拠点とした活動ではAKBのアイディアの先駆である東京パフォーマンスドールは、彼らに続いて登場したのである。


(TKサウンド!)