レコ屋は潰れてもレコード会社はなぜ潰れないのか?

 TBSラジオのポッドキャストは直ぐなくなってしまうので早めに取り上げないと、ということで(本当はTBSラジオ「以外」のポッドキャストを紹介する企画とかしてるんですけど)。


ニュース探求ラジオDIG「『音楽が売れる』ってどういうこと?音楽産業のビジネスモデルを考える。」パーソナリティは荻上チキ と 外山惠理

■スタジオに音楽評論家の萩原健太さんをお迎えしました。『今月6日、CDショップ「WAVE」が全店舗を閉鎖』というニュースをきっかけに、かつてCD販売を主な収入源としてきた音楽業界はどうやってビジネスを展開しているのか?そして今後の音楽業界の展望とは?などお話をうかがいました。


 萩原健太氏は、かなり新しい技術には積極的でも、自身「世代的にパッケージには偏愛あり」という人なので、音楽市場の未来については、もっと若い人を一人ブッキングするべきだったと思います。amazonappleクラウドプレイヤーの話が出なかったのは、正直、半周以上遅れている。荻上チキ氏も駄目だなあ。

 とりあえず『デジタル音楽の行方』の内容(「水のような音楽」モデル)ぐらいなところは押さえておいてもらわないと。

 mp3と24bit以上の高音質配信に二極化するのは、そのとおりなんですが、ビジネスのことを考えれば、それ以上にプラットフォームの問題。また「二極化」というよりも同じプラットフォームの上で共存する可能性もある。
 クラウドプレイヤーに近いというか融合するものだろうけど、大分前から定額のストリーミングサービス(音質的には低ビットレートのmp3。これも日本では現在「Lismo unlimited」のみ)と高音質配信(日本ではototoyのHQDなど)があって、結局は二つが同じ「プレイヤー」の上に乗るかどうかというのが注目すべきところで、これは確実にamazonappleの競争になります。というか電子書籍もこの二社の争いですし。

 なんで、こういう議論にならないかというと、日本ではまだAKB48や嵐のCDが50〜100万の単位で売れてしまっているからなんですね。今更WAVEが破産したぐらいで、団塊ジュニア世代まで昔語りしてしまってるし。なんで時代は変わるのに、今までのレコード屋や本屋がそのまま続くと思うんだろう。まあマスコミの言論がいけないんだろうと思いますが。amazonといえば「ネット上の本屋」だと思ってたりする人がマスコミのオジサンに多すぎ。全然、違うのは『ウェブ進化論』程度を読めば判ることですのに。
 CDの売上が落ちてもCDショップが延命したのはDVD市場が成長したからですし、厳しくなったのはDVDが頭打ちになったから。ということでパッケージ製品を多角的に扱うのは不可避。つまり雑貨も扱うヴィレッジ・ヴァンガードような店にリアル店舗はなっていくしか道はないわけです。ちなみにゲームが配信中心になっていくとブックオフも潰れますね。
 
 さて何でブックオフがこんなにチェーンを展開できたのか、と言えば再販を初めとする価格カルテルが日本のパッケージ製品には認められてしまっているから、中古に価格競争力があったということ。でも新品での価格競争はない、というのが日本=ガラパゴスのプラットフォーム。
 萩原氏も、再販批判は「マスコミ最大のタブー」なんで直接は語ってませんでしたが、中間マージンのことは番組内で言ってました。この中間マージンは価格カルテルによって維持されています。中間マージンには卸売りの部分もあるでしょうが、レコード会社が宣伝費として上乗せしている部分が大きいでしょう。このお金は当然、マスコミに回るお金です(こういうことが判ってない人が単純に電通を批判してても意味ないですよ)。
 日本のCDはどれも例えばアルバムは一律3000円だったりするので、少ない枚数しか売れないので、大きな広告を打ってもらえない作品にも一律に広告費は含まれてしまってます。これはレコード会社の営業マンの給料になっているわけです。
 
 定価の15〜30%が宣伝費という話もあり。最近のCDはマキシで1200円、DVDつきで1600円ぐらいしますから少なくとも200円前後、多いと500円弱(!)が宣伝費に含まれているわけです。
 つまり、この部分がレコード会社が実際に製作に関わらなくても握っているお金です。
これがあることで握手会を開催できたりするんですけどね。ですからAKBのCDが売れるのも、この中間マージンがあるから!って、大変な思いをして歌って踊って握手しまくるのは女の子たちなんだけどなあ。結局、汗かかない人たちのポケットに金が回ってるのかなあ。

デジタル音楽の行方

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