愛しさと せつなさと 判りにくさと

 Tokyo Idol Festivalもはさんでしまって、大分、間が空きましたが続き。基本的にTIFのレポみたいなものはしませんが、最後にちょっとだけ触れるよ!

 それにしても今回の小川紗季の卒業は市井紗耶香のそれと同じぐらいの判らなさ加減だなあ。いや市井の場合は「契約の部分で親と事務所がもめたらしい」というのは、今ではおぼろげながら判ってるんですが。
 市井の場合はあった明確にファンに対して設定された卒業公演もないですし。かなり不満の声が上がっていたようです。

 こういう判らなさとか複雑さというのは、遠くにいるイチゲンさんへまで届く力はないよ、というのが今回のお話。以前書いた高度に文脈に依存していること(ハイコンテクスト)と「お隣さん同志」の問題です。

 最近、アイドル作品で、これが頻出しているように感じられるんですよね。
 例えば『マジすか学園2』。パート1がプロットは単純な変身ヒロインもので、初心者にも優しい作品だったのが、2ではメンバー間の力関係などが複雑になりすぎて、シナリオ的には完全にコアなファン向けのものになってしまっていました。結局、最終回で前田とシブヤ(板野)がコブシとコブシで勝負をつけなかったのも、まあ板野の現在のポジションに気を使ってなんでしょうなあ、でぃあじぇい。

 また残念ながら、ももいろクローバーZの「Z伝説〜終わりなき革命〜」もそう。
 これについては「自分たちで伝説っていっちゃうんだー。寒っ」みたいな批判が良くありますが、おそらく製作者サイドの意図としての「伝説」は水木一郎マジンガーZ)に対するリスペクトの現れだと思うんですよね。
 って早速、説明がサブカル的に複雑になってきましたよー。
 しかも、そこはロボットアニメ文脈なのに、全体は戦隊ヒーロー文脈。更にファンにはお馴染みでも、イチゲンさんは若干「ひく」だろう定番のメンバー自己紹介入り、というハイコンテクストさ加減。
 メジャーデビュー作の「行くぜっ 怪盗少女」には、まだ有名じゃない自分たちを「怪盗少女」に「見立てる」というメタファーの見事さがあったわけですが、今回は戦隊ヒーローへの見立てよりも、そのままの「ももクロ」を紹介してしまっている部分が強すぎます。

 そんなこんなで、ももクロの1st.アルバム『バトル アンド ロマンス』は売れ行きが今ひとつのようですが、内容自体はかなり良い作品だと思いますよ。傑作とは言えないにしても、秀作だし力作。
 ここでは1曲目に収録されている「Z伝説」が、「馬鹿になって」(アントニオ猪木ももクロの世界観の中に入っていくためトリガーの役割を果たしていているんですが、これが適当なポジションの曲だろうなあ、と思います。
 とにかく曲がどれも粒ぞろい。同じ前山田健一作のサンバ+ハウス(?)な「ワニとシャンプー」は「Z伝説」での賛否両論を払拭する快作ですし、「天手力男」はワールドミュージックのミクスチャー的な超怪作。「コノウタ」は所謂、初期三部作に連なるトランスサウンドのトラックに、AKB的男子視点から離れて、彼女たち自身の心情をファンに対してストレートに伝える歌詞でライブ終盤の定番になりつつある…と目ぼしいところを挙げるだけで、書きたいことは多いのですが、その他の曲もかなりレベルが高くて捨て曲はないんです。
 作家陣もバラティに富んだ収録曲はアルバムとしては統一感を削ぐ部分はあるかもしれませんが、ライブで聴く分には、このぐらい変化があった方が飽きないところはあるか。先日のよみうりランドでのライブについては各所でレビューがされているので詳述はしませんが、今や「最強のライブアイドル」と言っていいんじゃないでしょうか。
 

 さてTIFでは妹分の私立恵比寿中学のステージを幾つか観ましたが、こちらも「判りにくい」の範疇で、ももクロにある判りやすい必殺技(えびぞりジャンプとか)は全くないです。
 なのに、かなりファンを集め始めているというのがサブカルの恐ろしさ。こちらでは全面的に音楽面をプロデュースしてる前山田氏もリミッターを外したヘンタイぶりで「左ト全オマージュって!」

 私としては、ももクロのライブは「中に入って」楽しむことが出来たんですが、エビ中の場合は、ちょっと離れたところから観てるのが良いかな、という感じです。他のサブカル的に文脈依存度の高い作品に対してと同じように。