CD10万枚売るのって難しいよね(あるいは、ももクロのブレイクは何故、遅れているのか?) (FS35)

 前回の「音楽シーンの中の女性アイドルを展望する」の続きみたいな感じで。
 この前は「どうにか一般的な音楽ファンにもアイドルシーンの状況が伝わるようにしたいなあ」というところも書くきっかけではあったんですが、なかなか、これが難しいところですね。前提として書いておけば良かったのですが「やっぱりAKB48っていうのはCD全体の売上を支えている部分があって、これが広範囲な業界関係から支持されている原因でもある」ってところなんですよね。
 あれだけ売れれば当然、「こんなに寡占状況じゃ詰まらないよ」となるのが普通ではあるんですが、「そうは言ってもCD売ってくれるだからありがたいじゃん、グラビア載せたりすると雑誌も売れるし」という。TVの視聴率にどれだけ関係するかとか、CMで起用して効果があるのか、というとこはAKBって良くわからなかったりするんですが…、まあCDと紙媒体では強いことは明らかです。
 ただ、そうは言っても、やっぱり「AKBばっかりじゃ詰まらないよ」ってところで業界的に期待が高まってるのは、やっぱり、ももいろクローバーZなんだろうな、というところ。でも前回も書いたように、まだ「テッペン」は取ってません。とりあえず、これを「CD売上10万枚の壁」と言う観点から見てみましょう。


 今に続く新人女性アイドルブームは、どこに発端があったかというと私は2007年から8年にかけてのPerfumeのブレイクにあったと思っています。Perfumeが10万枚以上売り上げたのはアルバム『GAME』が最初で、シングルよりもアルバムでトップに躍り出るところも、ちょっと所謂「アーティスト」のカテゴリーっぽいところもあるんですが、まあシングルでは2008年に「love the world」で一位を獲得して売上もシングルで初めて10万枚を突破しました。その年末に紅白初出場となるわけです。
 つづく2009年がAKBのブレイク。「10年桜」で10万を突破し、「RIVER」で週間一位も獲得。
 そして次の10年がどうだったかというと…、もちろんSKEというのもありますが、このへんはAKB関連グループとして考えた方が良くて、「新人」ということで言うとK−POPのKARA、少女時代となります。この2組が10万枚越え。


 ということで昨年、「アイドル戦国時代」という言葉が広まっていったあたりですが…ここで新人で10万突破するところが出なかったんですね。個人的には、このブログに書いてきたところでも判るでしょうが(特に「週末ヒロイン・ショー ももクロちゃんと握手 約束だっ!?」など)、ここで、ももクロにブレイクして欲しかった、というのが正直なところでした。作品的な面白さから言って「ミライボウル」が、現時点でピークかなあ。
 やっぱり震災の影響は大きかったかな…と思いますね。
 『バトル アンド ロマンス』は良いアルバムだと思いますが、やっぱり社会状況に引っ張られてしまったところはあるかなと、今になると思います。もちろん、それを評価する向きもあるとは思いますが、そういう役割を担うのは既にトップにたっているAKBだった、と言わざるを得ません。AKBのコンセプト的には上手く前年を踏襲して焼き直しをしつつ、音楽的に急激ではない変化をつけるという保守的な戦略が、ももクロの完全にオルタナティブな路線よりも合っていたというところかと思います。
 簡単に言えばフレッシュな新人を受け入れる余裕が去年の音楽シーン全体には無かったということになるでしょうか。


 というところで、ようやく今年になって、ももクロも一般的に広く知られるような状況にはなってきているのですが、気にかかるのは、それまでのファン層、特にグループ名に「Z」が付く前からのファンや興味を持っていた人たちが離れ行ったというところがあるということです。かく言う私もそうなんですが…、これが、ももクロの完全なブレイクを遅らせている原因になっていないか?
 実際の競争的には以前の方が、ももクロと48グループとは丁々発止の部分があったのは昔から知っている人たちはわかっているところですが(笑)、比較的に友好的にステージやメディア上で絡むようになってきてからの方が、一般的な層からは、ももクロが「AKBから差別化できる存在」、また更に進んで「アイドルの枠をハミ出た存在」として認知され、支持されるようになったというのは皮肉なところです。もちろん以前から「先物買い」していたメディアの一部も、それを継続するということで、置いてけぼりを食らったのが、いわゆる「ヲタ」、濃いアイドルマニアの層ということになります。元々は、この層が買い支えていたという側面が非常に大きいにも関わらず…。

 11月には、おそらく今年最後のシングルになるだろう布袋寅泰作編曲の「サラバ、愛しき悲しみたちよ」が発売されますが、あまり状況的には変化が無さそうな中で果たしてどうなるか…。それほどワクワク感が起こらないのが、まあ、そういうことかな、という感じです。