BiS×ドロシーのコラボシングル「GET YOU」が狙う「その先」

 BiS特有の"ドイヒー"な狙いにドロシーが巻き込まれた「ビンタPV」で、後者のファンに波紋を投げかけたコラボシングルのタイトル曲。ですが、曲自体はダサンブルな最新エレポップサウンドアイドルソングに見事に落とし込んだ良曲。所謂PPPHが出来るBメロも用意されてます。

 ドロシーファン目線で言えば、メジャーデビュー前に加入したことで比較的控えめなポジションを取ってきた早坂香美さんが大きくフィーチャーされたことが注目ポイント。こちらについては、また別の機会に詳述したいと思っています。


「GET YOU」の歌詞内容は聴いていただいたように、一人の男性を奪い合う女性たちの心情を歌ったものですが、コンセプトおよびシーン状況から見れば、BiSとドロシーという普通に考えればコラボするのが考えられない両極端なグループ(衣装の白と黒との対比でも表現されています)を競争というフィールドで会いまみえさせると同時に、逆に2組が協力することで他のグループと競い合うという二重になった戦略も見えてくるところです。PVのラストで、ドロシーの後ろにBiSが並び立つ姿は、そんな複雑なあり方を示すことを意図しているのかもしれません。


 このシングルは来る1月9日にBiS盤とDorothy盤の2形態で発売されますが、同日には、さくら学院から派生したユニットBabyMetalとSUPER☆GIRLの妹分であるCheeky Parade(チーキー・パレイド)の、それぞれのメジャーデビュー作になるシングルもリリースされるところで、近年のアイドルブームも、いよいよピークになるような新春早々のリリースラッシュ。特にチキパの方はBiSならびにドロシーと同じレコード会社avex内のアイドル専門レーベルである「iDOL Street」の第2弾として満を持して華々しくデビューするグループということもあり複雑な様相を呈しているとも言えます。実際のところ発売はチキパの方が先に決まっていたところでもあるので、わざわざ同日にブツけてきてるということも、裏読みし過ぎでないかも…。


 AKB48の大きなブームが「センター」前田敦子の卒業で一つのピークを過ぎるとともに、ももいろクローバーZの本格的なブレイクが起こり、48グループの寡占状況に風穴を開けたところで明けた2013年。本来なら、ここ数年言われていた「アイドル戦国時代」という言葉は、これからのシーンを言い表すものこそが正しい用法になりそうな状況かもしれませんが、やはり言葉として古くなってしまったというは流行語の常かと思います。

 年末に予想していた以上に結構な数のグループが全国ツアーを行うことも、次々に発表してます。
 また新年もフェス的なイベントも東京で大規模なものが2つ開催されましたが、どちらかと言うと去年の後半からはトレンドとして見ると、ワンマンから2マンまでのイベントの注目度が高かったようにも感じられるところです。
 BiSとドロシーもコラボシングル発表に続けて1月14日(祝)に恵比寿リキッドルームで2マンライブを行いますが、このような練りこまれた戦略がないと、対バン的なイベントも効果が薄くなってくることも予想されます。


 先の3組(4組?)についてもNTV系列の音楽番組「ハッピーMusic」で特集を組まれたように地上波TVを含めたメジャーなフィールド、そして全国各地のライブイベントで人気グループ、中堅、新人が多数パフォーマンスを繰り広げることでシーンの状況は大きく変化しつつあると言って良いでしょう。

 前述のTV番組でも「明らかにされてしまった」ように今回のコラボはチャートの10位圏内を狙う意図で企画されたものですが、本当に重要なのは「その先」です。BiSは3月に両国国技館のでライブという大きなイベントが控えていますし、ドロシーの方も地元の大箱、仙台サンプラザでの年内の公演を目指して、早速今月から始まる東京での定期公演(公式には未発表ですが仙台でも行うという話もあり)と仙台および東名阪の春ツアーを発表しているところで、更なるファンの獲得を目指しているところでしょう。
 あくまでチャート初週でのライクインは、そのことで得られるパブリシティ効果、つまり各種のメディアで話題として取り上げれることで、更に認知度を上げることに繋げなければならないもので、最終目標ではありません。

 ともあれ、そのような戦略を更に超えて、楽曲的に注目すべきシングルでもあるので、まずは曲から入ってもらいたい、という気持ちも私は強いですね。明日には店頭に並ぶので音源をチェックしたら、また詳しい感想を書きたいと思っています。