ドロシーの創造的壊崩 あるいは 「第三章」も忘れよう

 今回は済みませんが一見さんお断り、既にタイトルからして判りにくいですが、ドロシーに詳しい人向けに、細かい説明を省略して進めますので、ご了承のほど。既にドロシーとしか言ってないし。その他の音楽用語も、ちょっと不親切な書き方になりますが、ご容赦を(と前置きが長くなってますが)。

 ということで「GET YOU」収録の坂本サトルさんによる久しぶりの作曲&プロデュース作から。

 初の「失恋ソング」であると共に、初のサトルさんによるストレートなロックナンバー…というと「ジャンプ!」だってロックじゃないかと言う声が出てくると思うんですが、今回のポイントがここです。


 まず「ジャンプ」はサウンド的にはハードなギターが入ってますが、ビートはモータウンのH=D=Hのそれですよね。同じく小西貴雄さんアレンジの「ソウル17」は、それこそソウル、プライマル・スクリーム経由のストーンズみたいなR&B調。
 現在の坂本制作曲のアレンジャー安部潤さんを初めて迎えた「冬の桜」では四つ打ちが導入されて、歌詞的にも続編と言って良い「デモサヨナラ」も同じ四つ打ちでディスコ寄りのビート。同曲がタイトル曲のデビューミニアルバム収録のその他の曲も基本、R&Bやファンクの要素が強くて、このへん以前、私はAORという言い方もしたんですが、スクエアに二拍四拍にスネアが入るようなロックの曲は今回の「壊れちゃう崩れちゃう」までサトルさんの曲では無かったんですね。
 アルバムのタイトル曲になった「Life goes on」はギターロック的なサウンドですが、発表当時も「マンチェスターじゃん」って言われたぐらいの音で(このへん私があまり詳しくないんで曖昧に…)、単純なロックビートではないです。
 だからこそ初期はカバーですが唯一のストレートなロックナンバー「臨戦態勢が止まらない」が映えてたという部分もあったんじゃないか、と。

 ところが所謂第二章の「HAPPY DAYS!」収録曲は、ほぼ二拍四拍スネア。「飛び出せ! サマータイム」についてもツキダタダシさんの曲は同じです。メンバーも「サトルさんの第一章はロック」というようなことを言っているんですが、私基準ではちょっと違うんですね。前述のような理由で第二章の方が「ロック」に感じます。

 
 「GET YOU」収録曲はタイトル曲と「nerve」のBiS関連のところも今までのドロシーの歌詞世界からすると「挑戦的」ですが、「壊れちゃう崩れちゃう」は歌詞サウンド共にサトルさんが復帰したからと言って決して原点回帰ではないものです。意図的に違うテイストを持ち込んでイメージを崩すとともに新しいステージに持っていくような、これこそプロデュースって言うじゃないかと。
 逆に第三章の始まりとして発表された「風よはやく」の方が第二章から第一章にもう一度揺り戻すような方向性で、タイトル曲と「永遠になれ」は共に遅めの四つ打ちで歌詞内容も「冬の桜」、「デモサヨナラ」を意識したようなところがあります。このへんは、ディレクターさんが、かなり意図的にやったんじゃないかな…。

 
 さて収録曲タイトルも情報公開されたアルバムを少しプレビューしておくと既に「My Darling」がライブで披露されてます。


「夢見る少女じゃいられない」を始めとした相川七瀬の曲へのオマージュかつアンサーソングのような「かなり意図的に狙ってるけど大マジな」歌謡ロックで、こちらもサトルさん制作の可能性あり。ちょっとロック寄りの曲が続いているので、若干不安にもなりますが、とりあえずBiSとの対バンを意識して先に仕上げて来たという考え方もできるかな、と。
 もう一曲、Honda Carsの15秒CMのタイアップ曲として既に公開されている「Dear My Friend」は、ちょっとギターポップ寄りかなと思われる曲。これもサトルさんっぽい。
(1月27日後記)まだ公式情報ではないですが、どちらもサトルさんじゃないようです…。



 ともあれ、そもそも「第二章」というのも何らかの理由でサトルさんが一回、離れることになったことに対するエクスキューズでしかないのは明らかなので…。もう第三章は、どんな方向性なのと言っても、これだけバラエティに富んだ楽曲が年末年始数ヶ月でコラボ合わせて7曲レパートリーに加わっているので、非常にハイペースですね。加えてアルバム曲で「Dear My Friend」含めて4つライブで披露してない新曲があるので更に増えると言うことで、それをどう組みあわせてライブを作っていくか、という段階に入ってます。ロック的な曲が増えても、そうでない曲も既に沢山ありますし、そういう多様な曲を表現するメンバーたちの技量も、今回は細かく触れられませんでしたが、向上して来ています。期待して今週末の定期ライブ初回を迎えたいと思います。