極私的東京女子流論(でも話はEspeciaから始まる)


 最近、所謂「楽曲派」(笑)寄りのアイドルファンの間で話題を集めるEspeciaですが、極私的な第一印象として「こりゃ意図的か無意識かは別にして女子流に対して批評的に機能するなあ」と思いました。
 曲を聴いていただけば判るように音楽的には、女子流に結構、重なるような80年〜90年代のAORあるいはアーバンソウル系のサウンド。でも女子流は美少女アイドルグループなのに対して、こちらは思いっきりリバイバル感を強調した、その頃、バブル期にはブイブイ言わせてただろう大阪オバチャン系ファッションを纏って「堀江系」を標榜するグループ。まあ正直、女子流って、この頃の音に馴染みのあるオジサンが「古参」としてファンに中心にいるわけで、そういうところを明るみに出しちゃったかなあ、というのが先の印象に通じてるわけです。
 ということでEspeciaの話はここまでですが、初見で興味を持った方はメンバー的には脇田もなりさん(ひょう柄のブラウス着てる人です)に注目して見ていただければと思います。


 さて女子流に関しては一応、デビューの2010年から知っていてライブも見てるんですが、ワンマンって実はまだ行ったことないんですよね。評価はしてるんですけど、そこまで熱心じゃないリスナーで、気が付いたら、ここでもフィーチャーしたことが無かったな、と気が付きまして、今回、書いてみようと思った次第。
 まず年齢が低すぎて推しにくいというのもありますが…って言ったら、前に大フィーチャーしたさくら学院だって同じじゃん!
 だから、深く考えると、それが理由じゃないんだろうな…。


 もう、武道館も経験した存在なのでシビアに書いても良いでしょうが、女子流ってライブでの歌唱に結構、難点の多いグループです。でも、それも他のアイドルと違って、ほぼ完璧な生歌だっていうところが原因のところもあり。
 実際のところ、「生歌でやっている」と言われるグループでも、コーラスやダブルボーカルはカラオケに入っているところがほとんどです。つまり厳密に言うと、口パクじゃなくても、程度の差はあれ「かぶせ」。そこを女子流は、完全に生でやってるわけで(ああ表現が悪いけど、他に思いつかない)、武道館でも展開したバンドスタイルであっても、全部出来るぐらいにしよう、と言う方向性なのかな、と思われます。他と同じようにやれば、もっと「耳障り」は良いのに、あえてそうしてないというように感じられるところ。


 というところから、マネージメントを担当する佐竹氏の育成哲学が如実に見えるところで、楽曲についても各所で氏が語っているように、メンバーが歳を重ねても歌っていける「大人な」ものにしている、とのことです。でも、そのために犠牲になっている部分もあって、やっぱり音楽的な傾向がファン層を狭めているかな…というところはあり。企画物的な定期ライブではカバーもやるんですが、これも古い、まあオジサン向けの曲が多いですし。
 ただ、驚いたのが最近、PSY「カンナムスタイル」をカバーしてるんですね。これを、やっとライブで見たんですが凄く面白いです。「カンナムスタイル」自体、まあ欧米の所謂エレクトロ・ダンス・ミュージック(EDM)、というか、LMFAOの「Party Rock Anthem」あたりにインスパイアされた曲なわけですが、女子流が初めて最新流行のサウンドに挑戦したんじゃないか、という。元曲やってるのは韓国人のオッサンですけど。

 まあ、カバーしたのにはエイベックス的な背景があるかもしれないですが(笑)。でも、やっぱり流行り物はやって欲しいですよね。モーニング娘。が完全にEDM路線に振ってる昨今ですので。実際、エバーグリーンなサウンドを目指しても、実際のところは、制作されたときの時代性は、かならず残るわけで。
 ただ、逆に言うと、女子流が今やってる音楽が本当にリバイバルして流行する可能性もある、というか、かなりありうる。というのがEspeciaの登場からも判るところ。もしかすると女子流自体、それを見越してやってるという見方も出来るかな。アイドルというのは、まずメンバーのヴィジュアルやキャラクタから入るパターンがあるわけで、既に、ファンが拡大していっているのにつれて古参とは違った若い層が着いてきているようでもあります。その流れで所謂ピンチケ層にも、この手のテイストが受け入れられていくんじゃないかと。それから女性にも広がっていく期待もありますね。
 例えばEspecia以外でも、LinQの楽曲を手がけていたH(eichi)さん&SHiNTAさんのコンビがプロデュースするダンス&ボーカルグループTRICK8fとラップユニットFantaRhymeのアーバンサウンドは、より現代的な音ですが、つながってます。個人的にはprediaも同傾向から再評価(?)されて欲しいところ。ニューアルバム聴けてないですが、女子流のサウンドプロデューサーでもある松井寛さんも参加してるみたいですし。もちろんNegiccoも(って、かなりトマパイのやっていた定期クラブイベントPS2Uに出演してる面子にかなり重なってますが、まあ、そういうこと)。よりアメリカ最新系R&Bサウンドということではフェアリーズはもちろんですが、アイドルストリートの新グループGEMが、より注目かと。


 ただ、短期的に見ると女子流がブレイクするには、ちょっと懸念材料もあるかと思います。
 まずデビュー時からの歌唱の中心であるはず、小西さんがライブで、かなり不安定さを見せているのが心配です。本来なら最年少の新井さんが成長してくるところで、小西さんと並んで、ボーカル面での2トップとして活躍するというのがプランだったんじゃないかとも推測できて、実際、代表曲ともいえる「Limited addiction」は、そういう作りなんですが、今は歌でもレベルアップした新井さんが完全に中心になってきてる感が。この点が、諸々、バランスの悪さにつながっていくと、ブレイクの遅れにもつながるかと。
 武道館は女性グループ史上最年少公演を狙って、あのタイミングしかなかったところで、年齢的には急がなくても良いところはありつつ、その後の今年の展開は、やっぱり「武道館後」を見据えないといけない。そう考えると、去年は武道館と言っても客席数を抑えたステージだったので、今年は、より動員を増やして再チャレンジという見せ方も一つありかな、とは思います。
 ともあれ、武道館をやったからと言って、それを売りに安易にテレビのゴールデン枠でマスな訴求も図っていないところで、着実、堅実に大きくしていこうとしている運営は好感が持てますね。